Rigaku Life

研究室に行ってみた!

ナスと溶岩に共通の物理法則?身近な“火が通る”現象と溶岩チューブのふしぎ

溶岩チューブ

 ナスが美味しい季節ですね。ナスを炒めるとき、切る厚さを半分にすると火が通る時間はどのくらい短くなると思いますか?半分でしょうか? 

ナス

 実は半分ではなく、1/4になります。また、厚さを十分の一にすると、こんどは1/100になります。厚さを薄くすると、加速度的に熱が伝わるようになります。急いで料理をしなければいけないときは、少し面倒でも薄く切った方が良いことがわかりますね。

 さて、ここで物理の世界へ招待しましょう!この現象の答えは、「熱拡散方程式」という考え方で簡単に求めることができます。切ったナスの板を左側から温める場合、左側からやってきた熱は内部を温めるのに使われ、右側から通り抜けてくる熱は小さくなります。「k」を(㎡/s)を単位とした熱拡散率とし、「t」を時間とします。熱拡散方程式を使うと、一定温度の物体の表面温度を変えた時、温度変化が伝わる物体の長さは「√kt」と表されることがわかっています。つまり、熱が伝わるのに必要な時間は、長さの2乗に比例して変わります。

 実際に熱拡散方程式は研究でどのように利用されているのでしょうか?名古屋大学大学院環境学研究科で火山の研究をされている並木敦子先生にお話を伺いました。

 

並木先生と筆者
(写真右)地球環境科学専攻准教授 並木敦子先生
(写真左)筆者

 

 熱拡散方程式は火山の研究においてとても重要で、数えきれないほど利用するそうです。たとえば、写真のような火山噴火によってできる軽石の研究もその一つです。ドロドロのマグマからなぜこのような岩片ができるのでしょうか?この謎は、熱拡散方程式を用いてマグマの冷やされ方を調べることにより解明されました。マグマが噴火によって地表に出ると、表面は急に冷やされ固体になります。一方、中はまだ温かいので膨張しようとして引きちぎられ、粉々になり、軽石が形成されるそうです。

溶岩片
ハワイ・キラウエア火山の噴火(2018年)にて形成された軽石

 

 また、溶岩チューブという火山構造の研究にも、熱拡散方程式が利用されたそうです。溶岩チューブは、溶岩洞や溶岩洞窟とも呼ばれ、中が空洞の円筒形の構造を持っています。溶岩が地表を流れると、外層が冷えて固まり始め、まだ流れている溶岩を内側に包み込む殻が形成されます。 溶岩の性質や大きさによって作られ方が変わり、たとえば規模が大きい溶岩流の場合は内側の溶岩が流れたあとに中空の円筒形の管が残ります。また、 内側の溶岩は、ガスを含んでいるため泡がたくさんあります。規模が小さい溶岩流の場合は、時間の経過とともに内側の泡が合体し、殻が冷えて固まることで中空の円筒形の管が残ります。


 このように、熱の伝導が鍵となる研究において熱拡散方程式は欠かせません。初期の惑星の形成など火山以外の研究でも幅広く利用されているそうで、研究の基礎となる熱拡散方程式がいかに大切か学びました。熱拡散方程式は熱流量を使って考えることができます。気になった方は是非、さらに詳しく調べてみてください!私もあらためて勉強し直そうと思います^^

(文・大久保結実)

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