Rigaku Life

研究室に行ってみた!

地中の「見える化」で世界が広がる!知られざる木の根の生態にせまる

木の根。ふだんは見られない地中の世界。
地上の見た目は似ていたとしても、環境によって木の根は変わります。名古屋大学地球環境システム学講座の平野恭弘先生は、この根に着目して森林の生態を研究しています。

地上と同じくらい、地中には複雑で興味深い世界が広がっている

 

根は生態系に重要な役割をたくさん果たしています。たとえば「細根」と呼ばれる細い根は、栄養や水分を吸収するだけでなく、落ち葉のように「落ち根(細根リター)」として枯れ落ちることで土壌を作ります。しかし、この過程はこれまで観察が困難でした。
平野先生のグループはこの落ち根を直接回収するため、ガラスビーズと森の雨水を詰めた装置を開発し、生きた木の細根に直接装着しました。毎月回収、観察することで、細根が落ち根となるようすを「見える化」したのです。この結果、葉を落とす時期と、「落ち根」が発生する時期が異なることが解明されました。植物が土壌へ栄養を投入する物質循環のタイミングが、葉と根で異なるのです。

(写真上)細根、(写真下)細根リター

 

細根に対し、「粗根」と呼ばれる太い根は、ネットワークを作ることで体や土壌を支えています。では、地中のこの大きな粗根はどのように観察できるでしょうか?根全体の掘り上げを思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろんそれも重要な方法の一つですが、掘り上げる際に根を傷つけてしまうことがあります。
地中レーダ法は、根を傷つけることなく「見える化」する方法の一つです。観察する深さによって様々な周波数のレーダ(電磁波)を土の中に放ち、得られたデータを解析します。

地中レーダ法で使用する機器

 

現状では、根が張っている角度や土の水分量によってうまく「見える化」できないこともあります。地中の根の完全な3D再現に向けて、平野先生の研究室では現在も研究が進められています。

実測のようす。地中の見たい部分をありのままの姿で映し出す「見える化」への挑戦は続く

 

「日頃からちょっと注意して根っこを見てみると、すこし世界が違って見えることがあります」と平野先生は語ります。根の広い世界を覗いたことで植物の生態に興味が増し、今後のさらなる地下の「見える化」の研究を楽しみに思いました。

(文・大久保結実)

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