Rigaku Life

研究室に行ってみた!

世界最速!?名大の独自技術・原子核乾板読取装置

世界で唯一、「原子核乾板読取装置(げんしかくかんばん よみとりそうち)」を所有している研究室、名古屋大学理学部F研を紹介します。宇宙の成り立ちに関わる素粒子やダークマター候補の未知の粒子の探索、宇宙線による巨大構造物の透視といった、様々な研究を支える原子核乾板技術とは一体何でしょうか?

世界でも珍しい原子核乾板読取装置。研究室独自で開発した貴重な一台

 

この技術に欠かせないものが、原子核乾板。プラスチックの板両面に乳剤を塗布・乾燥することで作られるフィルムです。この乳剤には臭化銀が含まれています。ミューオンなどの電荷を持った粒子(荷電粒子)は、原子核乾板を通過するときに、この臭化銀に当たります。その結果、とても小さな銀の塊が発生します。1万分の1ミリ以下という高い精度で、荷電粒子の飛跡を銀の粒子の連なりとして記録することができます。現像後、専用の原子核乾板読取装置を通して、この飛跡を正確に読み取ります。

原子核乾板の断面図イメージ。粒子の飛跡を立体的に記録することができる

 

F研では、温度やpHの調整、薬品の調合による様々な乳剤の作成、原子核乾板読取装置の開発を独自に行っています。実は、原子核乾板読取装置を発明し、初めて実用化した研究室がF研で、現在もその開発を続けています。2024頃には今より約5倍も速く読み取ることができる新しい原子核乾板読取装置の実用化の可能性があり、今後の研究がとても楽しみです。

銀色の筒の先端、青く光っている部分が原子核乾板読取装置のレンズ部分。レンズが接近して読み取っている透明な板が原子核乾板。光学顕微鏡にたとえると、銀色の筒が対物レンズ。原子核乾板がプレパラートにあたる。

 

(文:大久保結実)

この記事をシェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

PAGE TOP