Rigaku Life

研究室に行ってみた!

老化は植物に欠かせない生存戦略!?その制御の謎を追う

植物は老化を利用しています。この仕組みはどうなっているのでしょう?現在、名古屋大学理学部の多細胞秩序グループ・特任助教の肥後あすか先生が「老化スイッチ」の研究を進めています。シロイヌナズナを使った実験を覗いてみました。

実験室で育てられているシロイヌナズナ。遺伝子やタンパク質などに関する研究情報が豊富でモデル植物とされる。前情報の多さや生育上の扱いやすさなどから研究対象としてよく用いられる

 

老化スイッチとは具体的に何か?実はこの答えはまだよく分かっていません。しかし肥後先生の研究から、シロイヌナズナのある遺伝子群を壊すと通常より早く老化が始まることが明らかになりました。
下の写真の手前側は、実際にその遺伝子群を壊したシロイヌナズナです。写真奥は通常のもの。発芽して3週間後、手前は下側が黄色く、より早く老化が始まっていることが一目瞭然ですね!

老化は多くの遺伝子が複雑に作用しあって制御されている。そのメカニズムは詳細に明らかにされていないが、今回その手掛かりとなる成果が得られつつある

 

老化の理由は、種に栄養を回すためです。どんな環境でも養分を成長中の部分に再分配して生き延びる。そんな植物の生存戦略としての老化の利用を垣間見ることができました。

移動もせず、動物とは異なる構造を持っている植物。肥後先生は、「それでもうまく外の環境を感知して判断し、個体の成長を制御しながら次世代へと繋げていく。植物の老化の制御は面白そう。」と語ってくださりました。

肥後あすか 高等研究院 / 遺伝子実験施設 特任助教

 

老化スイッチはまだ分からないことが沢山あります。1個か、複数か?また、どのようなタンパク質が関わっているのか?シロイヌナズナのように一生に一回花を咲かせて枯れる植物と、何度も花を咲かせる植物では、同じ仕組みなのか?今後の研究によりどんなことが明らかになるのか、とても楽しみです。 

(文:大久保結実)

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