Rigaku Life
留学体験記
火と氷の国・アイスランド ー 人、自然、そして調和
アイスランド。地球で唯一海嶺に位置する島国。二年ほど前まで、私はそのくらいのイメージしか持っていませんでした。しかし、地球惑星科学科に所属し、学習を進めるにつれて、火山と氷河の存在から「火と氷の国」とも呼ばれるアイスランドの雄大な自然の魅力や、地殻が沈み込む場所の日本とは逆に地殻が生み出される場所という地学的な興味から、学部間交換留学をしたいと強く考えるようになりました。交換留学が決定した後に、アイスランドについて調べていくと、世界のどの国とも異なる政治や文化、自然との接し方に魅力を感じるようになり、到着した今では、この国が大好きになりました。
Hafnarfjörður(ハフナルフィヨルズゥル)は”Lava Town(溶岩の街)”と呼ばれるほど、昔の噴火による溶岩で溢れています。人里離れた大自然のようですが、左写真中、左奥に街並みが見えるでしょうか。実はこの街の一部です。
アイスランドに着いてから、まずHafnarfjörður(ハフナルフィヨルズゥル)という市に滞在しており、ここで一番強く感じたことは、街と人が自然と共存している、ということです。街づくりにおいて、よく「共存」という言葉は耳にしますが、真の意味を考えさせられたのは初めてでした。写真は、ある遊歩道から岩を撮ったものです。まさに地球の割れ目!とも言わんばかりに大地を感じますが、実はこの場所、街中です。隣には大きなサッカースタジアムがあり、近くの道路では車がすごい勢いで走っています。しかし、お昼過ぎになると子供達や親子連れ、サイクリングをする人々がやってきて、岩や川で遊んだり、リラックスしたり、気分転換を行うようです。また、この市は海が近く、沿岸のゴミ一つない道路を、広がる景色や海鳥を眺めながら楽しそうに歩く人、犬を散歩させる人が多いです。私のホストマザーは、ある時「ああ本当に仕事疲れた。ちょっと出掛けてくるわね!自然の中を歩くのが大好きなのよ」と近くに散歩に行っていました。私自身も、朝起きてスマホをチェックするより、遠くの山々や海、海鳥の飛行や喧嘩を眺める方が楽しくなり、日中はつい散歩に多くの時間を費やしてしまいます。Hafnarfjörðurでの生活で感じた、暮らしの隣にある自然。この自然と共存した生活は、小さな幸せを守る一つの鍵ではないかと思いました。
また、8月10日には、首都Reykjavík(レイキャビク)でPride Parade(プライド・パレード)が開催されました。もともと、LGBTQなど教育を目的として年に一度行われることは調べていましたが、実際に訪れてパレードを目の当たりにすると、感動して思わず涙を流してしまいました。
人々が、文字通り着たい服を身につけ、自分自身を表現し、街中を歩く姿に、「自由」という言葉の意味を改めて考えました。また、パレード、というとパレードを行う人々がいて、それを見る私たちがいる、という演者と観客という構図が私の中にありました。しかし、Reykjavíkに向かうバスの中から既に、カラフルな衣装を身につけた市民に囲まれ、パレード中も旗や虹色のメイクをした観客で溢れ、最後には参加したい人が列に参加するような流れができ、皆参加者であるという感覚を抱きました。そして、アイスランドでの各団体の活動をより身近に感じることができました。
地熱発電によりお湯は硫黄の匂いがかすかにして、ほぼ深夜まで明るく、日中でも長袖プラスもう一枚、というような寒さが続くアイスランドですが、空気がとても綺麗でおいしく、その自然や文化、社会の在り方に日々圧倒されます。8月14日からは地質調査が始まります。アイスランドで、どのような調査が行われるのか気になって仕方ありませんが、随時地学の記事も更新していきたいと考えております。もし他にも「アイスランドのこれが知りたい!」等々ございましたら、理学部公式Xまでご連絡いただけると嬉しく思います^^
(文・大久保結実)