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コンフォートゾーンから抜け出す

金岡 優依

筆者は、現在理学研究科理学専攻博士後期課程1年に在籍しており、物理学科生物物理分野の生体分子動態機能研究室に所属している。生物物理は、生命現象を物理的な観点から理解する学問である。そのなかでも、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)に特化した解析方法およびソフトウエアの開発をテーマとして研究に従事している。現在はタンパク質をターゲットとして、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析や結晶構造解析など他の計測手法で明らかとなった構造情報と高速AFMの計測情報を接続するような機能をもったソフトウエアを開発中である。

学部時より理学部物理学科に所属し、勉学に励んできた。物理の基礎となる理論から演習問題、実験での物理現象の理解などから物理学を体系的に学んできた。一方で授業や教科書だけでなく、さまざまな経験からも「学び」は得られることを示したいと考えていた。そこで学生団体であるTEDx NagoyaUの代表、長期休暇を利用した米国大学への研究留学、イギリスへの交換留学や名古屋大学が主催する起業アイデアコンテスト(Tongali)への出場など多くの学業以外の活動にもチャレンジしてきた。その経験から異なるバックグラウンドをもった人々との交流さらに自己管理能力や自分への向き合い方などを通じて、学業だけでは得られない学びを得て自分の経験の幅を広げることができた。無論その挑戦のなかで数多の失敗と挫折を経験してきたが、自身の弱みや苦手なことを知る非常に良い機会となった。この経験は現在の研究活動を行う上でも非常に役立っている。たとえば、研究における問題解決には多角的な視点が求められるため、さまざまな分野の研究者たちと議論を重ねる必要があり、コミュニケーション能力が求められる。また留学経験や失敗から得られた環境への適応能力や度胸は、国際学会への参加や外国人研究者との交流および異文化理解に大いに役立っている。

従って学業に励むことは勿論のことだが、その上で自分の視野を広げてみるために自分のコンフォートゾーン(慣れ親しんだ状況や行動の範囲)から一歩踏み出して挑戦してみることが大切である。自分の慣れ親しんだ領域から飛び出して挑戦することは決して簡単ではなく、リスクや不安な状況になるだろう。しかし、その過程で立ちはだかる挫折や失敗も、あとから振り返ってみると非常に大きな学びがあり一生の糧になる。また、その経験は将来の自分の選択やキャリア形成にも大いに有用であり、これを読んでいる学生の読者に是非さまざまな学びを得てほしい。

金岡 優依

物理学科 大学院理学研究科理学専攻博士後期課程1年

2021年3月名古屋大学理学部物理学科卒業。2018‐2019年 中谷RIES米国研究留学プログラム参加。2019‐2020年リーズ大学交換留学。2023年3月名古屋大学理学研究科物質理学専攻物理系修了、4月同研究科理学専攻物理科学領域博士後期課程進学。現在に至る。

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