私は普段、野生の鳥類に行動記録計を装着し、彼らの移動データからその戦略を読み解く研究を行っている。特に風を利用して飛ぶ鳥の移動戦略に興味を持って研究を行ってきた。鳥類の中でも大型鳥類の多くは羽ばたき飛行ではなく、風や気流を使って翼を動かさずに飛ぶ滑空飛行(ソアリング)を主な移動手段に使う。現生の鳥類のソアリング飛行は大きく分けて2種類あり、コンドルやワシ、グンカンドリ(図1)のように上昇気流を使って上昇と滑空を繰り返すサーマルソアリングと、アホウドリ(図2)やミズナギドリのように海上の風速勾配を使ったダイナミックソアリングがある(図3)。これらソアリング飛行中の鳥はグライダーのように翼を動かさないため、その飛行はグライダーと同様にニュートンの運動方程式でよく記述できることが知られている。

図1 グンカンドリの親子
現生鳥類の中でも特に高いサーマルソアリングの能力をもつ。左が雛鳥、右が親鳥。

図2 ワタリアホウドリ
最大級の現生鳥類。翼開長は3mを超える。飛行時間のうち大半はダイナミックソアリングを使って飛ぶ。

図3 サーマルソアリングとダイナミックソアリングの模式図
サーマルソアリンでは上昇気流、ダイナミックソアリングは海上の風速勾配を鳥は使う。