「系統分類学」と聞くと、図鑑のように生き物をグループに分け、名前を覚えることを想像されるかもしれない。しかし実際には、まだ誰も知らない生き物と出会い、「これは何者なのか」を一つずつ解き明かす、探偵のような学問だ。私は、未知の海産無脊椎動物を発見・分類し、それらを系統的に、すなわち進化上のつながりをたどりながら比較することで、他種や環境との関係が、特殊な形や暮らしをどのように生み出すのかを研究している(図1)。主な対象は、ミミズと同じ環形動物に属するゴカイの仲間である。未知の生物は深海や南極だけにいるわけではない。名古屋大学の臨海実験所がある菅島の磯や砂浜で、砂粒の間に暮らす1ミリほどの動物を探していると、図鑑に載っていない生き物が次々に現れる。潜水して海底の砂を掘ることもあれば、研究船で深海の泥を採ることも、南極の海で底引き網を曳くこともある。調査船では、海底から網が上がるたびに泥や石をより分け、波に揺られながら顕微鏡を覗く。生きている時の色や動き、他の生物との関係は、固定標本からはわからないことが多い。自ら採集し、見慣れない「変なやつ」を見つけた瞬間が、研究の始まりだ。

図1 さまざまな海洋生物たち
サンプリング中に得られた海産無脊椎動物。この中には未記載種(論文にすれば新種)も多数含まれる。



