生きものは、休息なしに生き続けることはできない。休息の中でも睡眠は、動物種ごとに姿を変えながら、生命維持のために広く共有されてきた行動である。私たちヒトは一生のうち約3分の1という膨大な時間を眠って過ごすが、その背後にある神経回路の仕組みや、睡眠がいつどのように生まれたのかという進化的起源については、いまだ多くが謎のままである。
なかでもレム睡眠は、長らく哺乳類や鳥類に特有の現象と考えられてきた。レム睡眠は夢や高次脳機能と関連づけられることが多く、進化的に高度な特徴と結びつけて理解されてきたのである。そのため、変温動物である爬虫類には、レム睡眠は存在しないという見方が一般的であった。
こうした通説に大きな転換をもたらしたのが、2016年にジル・ローラン博士らによって報告された研究である[1]。彼らは、爬虫類であるベアーデッドドラゴン(Pogona vitticeps、図1)の脳活動を詳細に解析し、哺乳類のレム睡眠および徐波(ノンレム)睡眠に対応すると考えられる二つの状態が、明確に切り替わることを示した。この発見を契機として、長年停滞していた爬虫類の睡眠研究は再び注目を集めることとなった。

図1 ベアーデッドドラゴン
日本ではフトアゴヒゲトカゲという名で親しまれている。




